追記

いがいが日記


2023-05-16 [長年日記]

_ RubyKaigi2023とRubyistBookAuthors

前回中止になった松本での現地開催。今回一番印象に残っていてる書籍著者訳者たちによる企画RubyistBookAuthorsについて記録を兼ねて書き残す。私の記憶で書いているので、事実と異なるところもあるかもしれない。実際は江森さんたちによる「技術書同人誌博覧会」に出ようという話も同時並行に進んでいるのですが、そちらは江森さんが別の機会に書いてくださると思う。

著者訳者が集まりスタンプラリー企画"RubyistBookAuthors"が開催された。著者訳者に話しかけてスタンプをもらい、4つ集まったら栞がもらえる企画だ。発起人の鳥井さんの記事にどんな企画かが書いてある。

It's time to collect stamps at the venue of rubykaigi2023 ! - Rubyist Book Authors Stamp Rally / 最近本を出したRubyistに話しかけようスタンプラリーrubykaigi2023 会場 をやります authorsrb

https://note.com/yotii23/n/n031bfdc95859

この企画をやりたい理由は「著者訳者たちとRubyKaigi参加者のコミュニケーションのきっかけ」をつくりたいからだ。そして鳥井さんの記事に書かれた「つまりわたし(鳥井)に話しかけてほしい」が端的に言い表していると思う。本を書く作業は1人または少人数で淡々と長い時間をかけて進む。それなりの時間を書けてやった作業に対してフィードバックがもらえたらとても嬉しいことだ。今までのコロナ禍では難しかったこともあり、著者訳者陣はひさしぶりに交流したい気持ちを高めていた。

最初は鳥井さんがスタンプラリーやりたい!と声をあげて、以降いろいろと話が固まっていく。どうやってスタンプ所持者をわかるようにするかは、早い段階で腕章のアイデアが出て、角谷さんが腕章スポンサーをやってくれることになった。

「Shibuya.rb RubyKaigi 2023 前夜祭」でこの企画の宣伝をしたところ著者訳者の仲間が増えた。嬉しい流れ。著者訳者同士の交流もたのしい。このときに「RubyとRailsの学習ガイド」を発売して、サインをたくさんさせて書かせてもらった。現地イベントというのはこんなにもたのしいものだったのかと忘れていた感覚を思い出した。詳しくは前の日記に書いた。

Shibuya.rb RubyKaigi 2023 前夜祭 GMO Yours・フクラス https://igarashikuniaki.net/diary/20230427.html

さらに、鳥井さんが腕章データを公開して著者訳者のみなさんが自分でスタンプ押す係になれる仕組みができる。これも素晴らしいアイデアで、さらに交流の輪が広がった。Shibuya.rbで加わっていた「うなすけファンブック」は参加の敷居を大きく下げるという良い仕事をしていた。

新刊が出るタイミングとも重なっていて、『ユウと魔法のプログラミング・ノート』、 『研鑽Rubyプログラミング』、『はじめてつくるWebアプリケーション 〜Ruby on Railsでプログラミングへの第一歩を踏み出そう』 が会期前後1ヶ月に出版されていた。最近、RubyやRailsの本が出るのは少ないのでとても嬉しい。研鑽Rubyプログラミングは原著者のJeremy EvansさんもRubyKaigiで登壇されるので、本人からサインがもらえる貴重な機会だった。昔はRubyKaigiに書店さんが出店していることもあり、サイン会もたくさんあったが、その空気がRubyistBookAuthorsで少し再現されていたことに懐かしい気持ちになる。角谷さんがかけあって大ホールへつづく通路の良い場所にある長机でauthorsrb連合で即売会ができた。

スタンプを押したり、サインをするときに、話しかけてくれた方と会話ができるのは本当に嬉しい。「パーフェクトRailsのおかげで転職できました」、「Ruby超入門わかりやすかったです」、「どの本もイラストがかわいいです」と嬉しいフィードバックをたくさんいただいた。

私の「RubyとRailsの学習ガイド」は100冊持ち込んで、全て頒布することができた。余ると思って返送の準備もしていったのでありがたいことだった。スポンサーブースを在庫置き場として提供してくれたコインチェックさん、搬入をしてくれた大和田観光さんには感謝している。

RubyistBookAuthorsのハッシュタグがauthorsrbになったことも影響してか、この活動は継続しそうな雰囲気になった。名前には力がある。ruby-jp Slackにauthorsrbチャンネルもできた。

https://ruby-jp.github.io

本や資料はなんぼあってもいいものなので、書く人が増えることはすごく嬉しい。そんな書いている人たちが楽しむ場所、情報交換の場所、そして読み手と書き手が交流できる場所としてAuthors.rbがにぎわっていくといいなと思っている。

まだまだ書きたいことはあるけど、以下、書き残したことを箇条書きで。

  • 場所があると話す機会、立ち読みの機会になって、そこから買ってもらえることがある。
  • 歩きながら本を売るのは難しい。知っている方を除くと、初めましての方に買ってもらうことはほぼなかったと思う。
  • 書籍が重いので、在庫置き場が欲しい。私はコインチェックさんのところを借りてたが、他の著者陣が宿泊先から補給するのは大変そうだった。
  • コインチェックさんブースに見本誌を置かせてもらって、そこでも引き合いがあったそうで嬉しい。
  • スタンプ台紙の置き場がわからない人も多かったので、スタンプとあわせて台紙を持ち歩いて配るとよさそう。
  • 電子版にサインできる技術が待たれる。RailsガイドやRailsチュートリアルのようにWeb上の記事を書いている人もたくさんいる。
  • 松本の丸善にも小さいながらもRuby本コーナーがあったことも嬉しい。Pythonは隣に2列あってすごい。

リンク集

RubyKaigi全体のダイジェスト

  • みなさんとたくさん話せて最高の時間が過ごせた
  • 送りだしてくれた妻に感謝
  • 数年ぶりに会う方も多くていろいろ話せてとてもよかった
  • フィヨルドブートキャンプのみなさんともお会いできてよかった。記念撮影の迫力がすごい。
  • 社内勉強会でリモートでしか会ったことないGlobisのみなさんと会えてよかった!
  • 松本の蕎麦、十割蕎麦でもコシがあってつるつるしていておいしかった
  • 松本の味噌ラーメンおいしかった。初めての街でラーメンを食べる体験おもしろい。
  • 食べチョクさんブースでもらったりんご「ピンクレディ」が抜群においしかった
  • 幻となったWEB+DB PRESSステッカーを通じてみんなの同雑誌の愛され度を感じた
  • 大和田観光さんに書籍を送付したところ宿泊先まで重い段ボールを搬入してくれた
  • 珈琲美学アベで朝ご飯を食べているとRubyistが集まってきて話ができる体験がよかった
  • 栞日の2Fが良い空気感でよかった
  • しばたさんに標準添付ライブラリと新しくできてきたDefault Gem, Bundled Gemの説明を聞けたのでRuby超入門にも反映していきたい
  • matzさんにmrubyがスタックマシンではなくレジスタマシンを採用した理由とそのメリットデメリットを教えてもらった
  • Parserの話題が多くて激アツだった
  • LSPの話題が多かったので調べたい
  • CFPを出して次回は話せるようにがんばりたい

2023-04-27 [長年日記]

_ Shibuya.rb RubyKaigi 2023 前夜祭 @GMO Yours・フクラス

お声かけいただいてRubyKaigiのRejectTalkをさせてもらった。tweetしておいてよかった。角谷さん、はるかさんさん、june29さん、くろたきさんと昔から仲良くしていただいてるみなさんと一緒に登壇できてとても良い機会だった。

話した内容は「機械にRubyを教えてもらうRuboSenseiをつくっている」という内容で、TypeProfで型推論をする話をした。CFPが出てからChatGPT-4が発表されて立場が危うくなっていたり、TypeProfも次のRubyKaigiでmameさんから新しい話があるようで、ちょうど良いタイミングで話ができてよかった。

https://speakerdeck.com/igaiga/shibuya-dot-rb-2023-04-27-igaiga

対面で話す機会はカレンダーを見返すと2019年秋以来のようで、約3年ぶり。話している自分のテンションが高くてびっくりするくらいで、この感覚はすっかり忘れてしまっていた。とてもたのしく良い時間だった。jokerさんとは渋谷Ruby会議01のおそろいのTシャツで写真を撮ったり、こういうことも現地イベントならでは。

また、会場で発売初日の本「RubyとRailsの学習ガイド」の紙本プレゼント企画でお渡しするときにサインもたくさんさせていただき、この感覚もRuby超入門のとき以来でとても嬉しかった。フィヨルドブートキャンプのみなさんともたくさんお会いできた。

渋谷の街は来るたびに変化しているが、地下の惣菜売り場をよくつかっていた東急の古いビルがピカピカの新しいビルになっていて新鮮な気持ちになれた。


2023-04-19 [長年日記]

_ SakuraVPS 石狩リージョン Ubuntu22.04

この日記と会社Webを運用しているサーバを恒例の式年遷宮で引越しした。もともとSakuraVPSで動かしている2CPU 1GBメモリ 100GB HDD構成だったが、ほぼ同じ値段でSSDにできるのでVPSも新規契約した。石狩リージョンが選べたので、北海道空冷は胸熱なので石狩にした。SSDは標準は50GBだが、初回1000円程払うと100GBに増やしてくれるそうだ。

Ubuntuは18.04から22.04へ。22.04は去年2022年に出たものなので、新しいやつが選べてよかった。過去の履歴を見ると10.04、12.04、14.04、18.04、22.04とバージョンアップしている。長く続いてくれてありがたい。ついでにRubyも3.2.2へ上げた。

今回はIPアドレスが変わるのでDNS切り替えの作業も。設定反映後5分程で私の環境はあっという間に切り替わった。DNS切り替え後、自マシン以外からhttpアクセスできない問題があった。以下、試したこと。

  • dig igarashikuniaki.net は新しいIPアドレスになる
  • ping igarashikuniaki.net はOK
  • curl http://igarashikuniaki.net で該当マシンからはアクセスOK、他のマシンからはタイムアウト
  • ファイアウォールはv4, v6とも 80/tcp ALLOW Anywhere
  • lsof -i:80するとnginxが80ポートをLISTENしている

原因がわからずしばらく悩んだのだけど、hsbtさんにtwitterでSakuraVPSの設定かも?とエスパーしてもらい、それが正解だった。ありがたや。原因はSakuraVPS管理画面にあるパケットフィルター設定でした。

https://twitter.com/hsbt/status/1648507814384660484

追記: 書いたときは気づかなかったけど、2023/04/20はtDiaryの22回目の誕生日🎂だとただただしさんの日記を読んで思い出す。おめでとう!🎉


2023-03-13 [長年日記]

_ 「発展する地域、衰退する地域」、「都市は人類最高の発明である」

街がどう成長するのかに興味がある。 セコンさんに、そんな感じの本を何か知ってますか?と聞いたら、面白い本を2冊教えてもらったので読んでみた。とても面白くて、今年読んで良かった本の上位入賞する本になった。メモを取ったので書評がわりに書きます。

一言で言うと書籍「発展する地域、衰退する地域」は「都市は輸入置換がうまくいったとき、副産物として資本を生む」、書籍「都市は人類最高の発明である」は「季候の良い街にみんな集まって高層住宅に住むのが地球環境的には最高」。

発展する地域、衰退する地域

  • 1986年発刊本を2012年に改訂

  • 経済単位は国ではなくて都市

  • 輸入置換: 輸入しているものを自前で生産して置換すること

  • 経済活動は輸入置換によって拡大する

  • 輸入置換がうまくいっているときは生産計画、原材料、生産方法の臨機応変な改良が行われている

  • 仕送り送金は都市の衰退速度を緩めることはできるが、止めることはできない

  • 工場誘致は工場がある間はうまくいくが、工場がなくなったときにどうなっているかによる

  • その工場でしか作れないものを作っていれば衰退する

  • 逆に、その工場があることで人が学び他の産業が栄えれば豊かになる(と解釈した)

  • 著者は豊かになるケースは稀で難しいと考えていて、例外的にうまくいったケースは台湾の例を挙げている

  • 台湾では誘致工場で働いた人々が地元資本の工場を設立して働くことをはじめ、それらが相互作用しあって多くの会社ができた(第7章 P.157〜)

  • 都市は輸入置換がうまくいったとき、副産物として資本を生む

  • その資本が都市の成長につながるものであれば、都市は成長していく(と解釈した)

  • (wikipedia 資本: マルクス経済学においては自己増殖する価値の運動体のこと)

  • 通貨の価値増減は都市経済を守る方向に働くが、国が通貨を持っているので割を食ってしまう都市も出る

  • 衰退の取引: 衰退する地方都市へお金をつかうと、お金を支出する栄えている都市も衰えていくが、それを止めるのは難しく取引してしまう

  • 衰退都市が復活するのは稀である

  • 衰退都市が復活するには創造性を育むしかない=複数の成功企業が出てくるしかない(と解釈した)

  • インプロビゼーション: ジャズ用語で即興演奏や即興曲を意味する

  • 住民が状況に応じて臨機応変に創意を働かせて共生的な関係を作り出す過程の表現で本書を通じて使われた言葉

  • 元鳥取県知事の後書き

  • 道路整備公共事業は長らくうまくいかなかったので止めた

  • 鳥取県で生産しているものはほぼなく、土地買収代も他県に住む子供などへ渡り、工事受注も外部の大手ゼネコンへ再発注されてしまう結果、鳥取県でお金が残らない

  • 輸入置換を地産地消で解決した

  • 学校給食食材を調べて他県産が多かったので県内産に切り替えた

  • 反発も多かったが、栄養士さんが県内食材のやりくりでメニュー立案してくれ、地元農家が不足分を生産して補った

  • 燃料費は輸入過多だが、県内で生産できる木材ペレットをストーブ燃料でつかうことで是正を目指す

  • 風力発電を増やして、他県に依頼していたメンテを県内人員で可能にしていく

  • 地域単位通貨構想は地域間給与格差が著しくなるため、日本では難しいだろう

都市は人類最高の発明である

  • 大卒者比率が10%増えると都市圏GDPは22%上がる
  • 国の全人口の修学年数が1年増えると1人あたりGDPは3割上がる
  • スラムは都市の恩恵、スラムだけを見ているとよくない場所に見えるが、スラムがないともっと貧困はひどくなる
  • 都会に住む方が郊外に住むよりも車を運転しないなどの理由で温室効果ガス排出が少なく環境負荷が小さい
  • 都会の住宅建築規制はその場所の住宅価格を上げ、他のなんらか不利を抱えた場所に人を動かすので、全体としては環境負荷が大きくなる
  • 季候の良い街にみんな集まって高層住宅に住むのが地球環境的には最高(と解釈した)

2023-02-25 [長年日記]

_ Ruby30周年イベント

今回はオンライン開催。お祝いムードの中、新旧の技術の話がいろいろ聞けて勉強になる。前日からruby30thタグでtwitterもにぎわっていてみなさんのコメントをたくさん読めている。

前回の25周年のときはパーティという華やかな雰囲気の会で現地でスタッフをしていたが、今回は家で妻と一緒にオープニングトークの角谷さんを応援する、温かい会だった。LTもベテランの方から新鋭の方まで多様で、Rubyをつかう人が増えていてとても嬉しい。matzさんも技術トークをとてもたのしそうに話していた。

私がRubyをつかいはじめたのはこの日記を書き始めた頃なので2003年、もう20年が経っていた。その後、2008年頃からRubyを書くようになり、2010年から仕事にして、そして大学で非常勤で教えて、本を書き、フリーランスになり、会社ができた。Rubyが生活を支えてくれている。なにより世界中へ遊びに行って、たくさんのRubyistと話して、みんなでおいしいものを食べて、たのしい時間を過ごせている。Rubyの仕事をこんなに長く続けられるとは想像してなかったけど、願わくば定年までRubyで仕事ができると良い。そのために自分にできることをやっていこう。


追記