2023-03-13 [長年日記]
_ 「発展する地域、衰退する地域」、「都市は人類最高の発明である」
街がどう成長するのかに興味がある。 セコンさんに、そんな感じの本を何か知ってますか?と聞いたら、面白い本を2冊教えてもらったので読んでみた。とても面白くて、今年読んで良かった本の上位入賞する本になった。メモを取ったので書評がわりに書きます。
一言で言うと書籍「発展する地域、衰退する地域」は「都市は輸入置換がうまくいったとき、副産物として資本を生む」、書籍「都市は人類最高の発明である」は「季候の良い街にみんな集まって高層住宅に住むのが地球環境的には最高」。
発展する地域、衰退する地域
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1986年発刊本を2012年に改訂
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経済単位は国ではなくて都市
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輸入置換: 輸入しているものを自前で生産して置換すること
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経済活動は輸入置換によって拡大する
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輸入置換がうまくいっているときは生産計画、原材料、生産方法の臨機応変な改良が行われている
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仕送り送金は都市の衰退速度を緩めることはできるが、止めることはできない
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工場誘致は工場がある間はうまくいくが、工場がなくなったときにどうなっているかによる
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その工場でしか作れないものを作っていれば衰退する
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逆に、その工場があることで人が学び他の産業が栄えれば豊かになる(と解釈した)
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著者は豊かになるケースは稀で難しいと考えていて、例外的にうまくいったケースは台湾の例を挙げている
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台湾では誘致工場で働いた人々が地元資本の工場を設立して働くことをはじめ、それらが相互作用しあって多くの会社ができた(第7章 P.157〜)
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都市は輸入置換がうまくいったとき、副産物として資本を生む
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その資本が都市の成長につながるものであれば、都市は成長していく(と解釈した)
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(wikipedia 資本: マルクス経済学においては自己増殖する価値の運動体のこと)
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通貨の価値増減は都市経済を守る方向に働くが、国が通貨を持っているので割を食ってしまう都市も出る
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衰退の取引: 衰退する地方都市へお金をつかうと、お金を支出する栄えている都市も衰えていくが、それを止めるのは難しく取引してしまう
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衰退都市が復活するのは稀である
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衰退都市が復活するには創造性を育むしかない=複数の成功企業が出てくるしかない(と解釈した)
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インプロビゼーション: ジャズ用語で即興演奏や即興曲を意味する
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住民が状況に応じて臨機応変に創意を働かせて共生的な関係を作り出す過程の表現で本書を通じて使われた言葉
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元鳥取県知事の後書き
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道路整備公共事業は長らくうまくいかなかったので止めた
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鳥取県で生産しているものはほぼなく、土地買収代も他県に住む子供などへ渡り、工事受注も外部の大手ゼネコンへ再発注されてしまう結果、鳥取県でお金が残らない
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輸入置換を地産地消で解決した
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学校給食食材を調べて他県産が多かったので県内産に切り替えた
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反発も多かったが、栄養士さんが県内食材のやりくりでメニュー立案してくれ、地元農家が不足分を生産して補った
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燃料費は輸入過多だが、県内で生産できる木材ペレットをストーブ燃料でつかうことで是正を目指す
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風力発電を増やして、他県に依頼していたメンテを県内人員で可能にしていく
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地域単位通貨構想は地域間給与格差が著しくなるため、日本では難しいだろう
都市は人類最高の発明である
- 大卒者比率が10%増えると都市圏GDPは22%上がる
- 国の全人口の修学年数が1年増えると1人あたりGDPは3割上がる
- スラムは都市の恩恵、スラムだけを見ているとよくない場所に見えるが、スラムがないともっと貧困はひどくなる
- 都会に住む方が郊外に住むよりも車を運転しないなどの理由で温室効果ガス排出が少なく環境負荷が小さい
- 都会の住宅建築規制はその場所の住宅価格を上げ、他のなんらか不利を抱えた場所に人を動かすので、全体としては環境負荷が大きくなる
- 季候の良い街にみんな集まって高層住宅に住むのが地球環境的には最高(と解釈した)